2017年6月2日金曜日

荻原健司 共同通信コラム Mar/2017

兄弟で五輪メダルを
渡部暁斗と善斗に期待

 フィンランドで行われたノルディックスキーの世界選手権の複合で、私がゼネラルマネジャーを務める北野建設所属の渡部暁斗が個人ラージヒルの銀メダルを、弟の善斗と組んだ団体スプリントの銅メダルを獲得しました。これまでの取り組みが報われたと思っています。
 3年前のソチ冬季五輪銀メダルの暁斗は自他ともに認める世界のトップ選手。ただ弟の存在はあまり知られていなかったかもしれません。今回、自分たちの力で兄弟であることを広めました。それは昔の私たち兄弟を見ているようでもありました。
 双子の弟、次晴は私が1992年のアルベールビル五輪団体で優勝した時、無名でした。同じ複合選手とはいえ、突然有名になった私に弟がいることなど、ほとんど知られていませんでした。
 「健司には、そっくりな弟がいる」と親切に報道するところはありません。私に間違われた次晴は道を歩けばサインや写真撮影をお願いされたようです。本人からすれば人違いですから「いえ、違います」とその場を立ち去ると、背後から「なにさ、有名人ぶって」と嫌みを言われたこともしばしばあったと後に聞かされました。
 双子と知られるようになったのは、95年の世界選手権団体金メダルがきっかけです。私も次晴も優勝メンバーでした。さらに98年長野五輪の団体で5位に入賞して完全に双子であることを証明できました。「兄に間違われたくない」精神が、2人で切磋琢磨する結果になったのです。
 善斗は暁斗より3歳年下です。兄より成績が悪くても「ジャンプは僕の方が絶対うまいですから」と強気です。この負けん気がいい。いつまでも兄の陰に隠れてはいられないとの思いを来年の平昌五輪で爆発させ、私たちがかなえられなかった兄弟での五輪メダルを実現してもらいたいです。


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